事業承継士|村上智史の「士魂商才」

中小企業の事業承継に特化したコンサルティング会社「バトン・コンサルティング株式会社」の代表のブログ。事業承継に関する経営者の悩みに関する相談事例や計画的に承継を進めるためのアドバイスなどをご紹介しています。

【中小企業の事業承継】国税庁による自社株評価(非上場株式)の見直しが始まった!

事業承継士の村上智史です。

 

現在、国税庁の有識者会議において、

「取引相場のない株式(いわゆる非上場株式)」の

相続税・贈与税評価ルールの見直し議論が始まっています。

 

www.nikkei.com

中小企業の経営者にとって、自社株評価は事業承継の成否を左右する、とても重要なテーマです。

 

特に、

  • 「株価が高すぎて子どもに承継できない」
  • 「相続税負担が重すぎる」
  • 「事業承継税制を使うべきか迷っている」
  • 「たくさん不動産を持っているので影響が気になる」

という悩みを持つ経営者にとって、今回の見直しは要注目です。

 

もっとも、現時点では「有識者会議での検討段階」のため、具体的な改正内容については不明です。

 

ただ、これまで指摘されてきた論点を整理することで、

「将来どのような会社が影響を受ける可能性があるのか」

をある程度想定することは可能です。

 

今回は、現在議論されている論点について、

事業承継の実務という視点から整理してみたいと思います。

 

<目 次>

なぜ自社株評価方式の見直しが始まったのか?

現在の非上場株式の評価に際しては、

  • 類似業種比準方式
  • 純資産価額方式

企業の規模等に応じて上記いずれかを選択する、

もしくはこれら2つを組み合わせて算定するルールが定められてます。

 

その結果、

大会社になるほど「類似業種比準方式」

小規模な会社ほど「純資産価額方式」

の割合が高くなっています。  

 

しかし国税庁は、

「類似業種比準価額方式が、純資産価額方式に比べて極端に評価額が低い」

ことを問題視しています。

 

実際、有識者会議の資料によると、

類似業種比準価額の中央値は純資産価額の約27%しかない

との分析結果が紹介されています。  

 

つまり、

「本来100の価値がある会社が、25〜30程度で評価されているケースが多い」

ということです。

 

そのため、

「本来の企業価値と相続税評価額が大きく乖離するケースが生じている」

という問題意識が高まっているのです。

 

一方、国としても、

  • 中小企業の円滑な事業承継
  • 地域経済の維持・発展
  • 人材雇用の維持・増加

を重視しており、単純に「増税方向」だけを目指しているわけではありません。

 

つまり今回の議論は、

「公平な課税」と「事業承継の促進」の2つのバランスをどう取るのか

という問題でもあるのです。

 

見直しのポイント【1】 類似業種比準方式

「類似業種比準方式」は、上場会社の株価を参考にしつつ、

非上場株式を評価する方式ですが、現在の経済実態とのズレが指摘されています。

 

1) 業種区分の問題

例えば近年では、

  • ITサービス
  • SaaS
  • プラットフォーム事業
  • AI関連企業
  • デジタルコンテンツ事業

など、従来型の業種分類では整理しにくい企業が増えています。

 

しかし現在の評価制度では、必ずしも実態に即した業種区分になっていないケースがあります。

 

その結果、

「類似業種の選定自体に無理がある」

という問題が生じているのです。

 

2) 3要素(配当・利益・純資産)のウェイトの見直し

類似業種比準方式では、

  • 配当
  • 利益
  • 純資産

の3つの要素を上場企業の数値と比準しつつ、株価を算定します。

 

しかし現在では、

  • 配当を出さず、内部留保を重視する企業
  • 利益より成長投資を優先する企業
  • 無形資産中心の企業

も増えています。

 

そのため、

「現在のウェイト配分が企業価値を適切に反映しているか」

という批判が高まっています。

 

もし、これらのウェイトが変更されれば、

同じ会社でも株価が大きく変わる可能性があります。

見直しのポイント【2】「時価」と「相続税評価額」の乖離

2つ目の論点は、

「市場価値に比べて相続税評価額が低くなり過ぎるケースがある」

という批判です。

 

特に注目されているのが、不動産を多く保有する企業です。

現在の評価制度では、

  • 賃貸不動産
  • 土地
  • 含み益資産

を大量に保有していても、

一定条件を満たせばその評価額を低く抑えることができます。

 

そのため、

「実際は非常に資産価値が高いのに、相続税評価額だけ低い」

という「ねじれ現象」が生じることがあります。

 

借入れを活用して高額不動産を取得し、相続税評価額を大きく引き下げるスキームについて、税務当局との間で争いになった事例もあります。

 

こうした流れは、近年の「タワマン節税策」の見直しとも共通する問題意識といえるでしょう。

 

つまり、課税当局としては「実態価値とかけ離れた低評価」を

一定程度是正させたいという意向を持っていると考えるべきです。

 

そのため今後は、

  • 純資産価額方式
  • 不動産評価
  • 含み益の反映方法

などについてメスが入れられる可能性が十分あります。

見直しのポイント【3】事業承継税制との整合性

3つ目は、いわゆる「事業承継税制」との整合性です。

 

現在、多くの中小企業で、

「相続税・贈与税の納税猶予制度」の活用が検討されています。

 

しかし、評価方式が変われば、

  • 猶予対象額
  • 将来の取消リスク
  • 承継後の税負担

などにも影響が及ぶ可能性があります。

 

もし評価方式変更によって株価が大きく上昇した場合、

  • 後継者の心理的負担
  • 制度利用のハードル
  • 将来的な税負担リスク

が高まる可能性があります。

 

そのため、有識者会議では、

「中小企業の円滑な事業承継を阻害しない配慮」

も重要な論点になると考えられます。

 

見直しのポイント【4】「種類株式」の活用による節税対策

有識者会議の資料によると、

所有と経営の分離を図る 「種類株式の活用スキーム」についても

今回の見直しの対象として取り上げられています。  

 

<参考記事>

baton-consulting.hatenablog.com

ただし、種類株式を活用して後継者へ議決権を集中させること自体は、

特に問題とされているわけではありません。

 

上記の不動産のように、「経営承継の合理性」を超えて、

「相続税評価を意図的に極端に引き下げる」ために

種類株を利用しているケースを国税庁は問題視しています。

 

今までの株価対策が通用しなくなる可能性も・・

今回の議論の本質は、

「自社株の評価に対する考え方の見直し」にあります。

 

これまで有効とされてきた、

  • 持株会社スキーム
  • 不動産活用
  • 配当政策
  • 純資産圧縮策

なども、評価ロジックが変われば効果が変わる可能性があります。

 

つまり、

「今の対策が、将来も有効とは限らない」

ということです。

 

事業承継のために経営者がやるべきこと

現時点で最も重要なのは、

「慌てて対策を変えること」ではありません。

 

まず必要なのは、

「自社株が、どのようなロジックで評価されているのか」

を正確に把握することです。

 

具体的には、

  • 類似業種比準方式なのか
  • 純資産価額方式なのか
  • 不動産含み益がどの程度あるのか
  • 株価上昇要因は何か
  • 事業承継税制との関係はどうか

などを整理しておく必要があります。

 

そのうえで、

「もし評価ルールが変わった場合、どの程度影響を受けるのか」

をシミュレーションしておくことが重要です。

まとめ

今回の非上場株式評価見直し議論は、中小企業経営者にとって、

・事業承継

・株価の引下げ対策

・株式の保有体制

そのものに関わる可能性のあるテーマです。

 

もちろん、現時点ではまだ議論段階であり、具体的な改正内容は未定です。

 

しかし、株価対策を含めて事業承継計画の策定と実行には、

数年単位で準備が必要になるのが一般的です。

 

そのため、「制度が変わってから考える」のではなく、

「変わる前提で現状を把握しておく」ことが重要です。

 

事業承継は、単なる税務上の課題ではなく、

  • 会社経営の継続と将来ビジョンの検討
  • 経営者のハッピーリタイア
  • 将来の遺産分割
  • 後継者の育成と経営の継承
  • 株主構成の見直しとガバナンス体制の検討

まで含めた総合的な問題です。

 

今後の制度改正の動向も踏まえながら、

早めに準備を進めていくことが重要だと感じています。

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バトン・コンサルティングでは、

経営・税務・法務を横断した事業承継の設計支援を行っています。

 ・現在の自社株の評価がどの程度なのか?

 ・後継者に自社株をいつどのように承継させるべきか?

 ・事業承継税制を活用する際に何をいつまでに検討すべきか?

 ・過去に提案された株価対策が本当に正しいのか不安だ

といった段階でも構いません。どうぞお気軽にご相談ください。

 

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