事業承継士|村上智史の「士魂商才」

中小企業の事業承継に特化したコンサルティング会社「バトン・コンサルティング株式会社」の代表のブログ。事業承継に関する経営者の悩みに関する相談事例や計画的に承継を進めるためのアドバイスなどをご紹介しています。

『準備』段階でも使える!東京都の「事業承継支援助成金」制度

事業承継士の村上智史です。

 

前回は、中小企業庁の「事業承継・M&A補助金(15次公募)」をご紹介し、

補助金の対象範囲や補助の割合、制度活用の際の注意事項等について解説しました。

 

baton-consulting.hatenablog.com

今回は、東京都が実施する「事業承継支援助成金」について解説します。

 

前回紹介した、国(中小企業庁)の補助金制度は、

「M&Aや事業承継を実行する段階での活用」を想定したものです。

 

しかしながら、実際に経営者の方のお悩みを伺っていると、

「まずは自社株の評価額を知りたい」

「まだ親族承継にするかM&Aにするか決めかねている」

「後継者候補はいるが、本当に任せてよいか判断できない」

という段階の方が圧倒的に多いのが実情です。

 

つまり、「事業承継を検討する初期段階の支援」についても

求められているのです。

 

こうしたニーズを持つ経営者にとって

都の「事業承継支援助成金」は使い勝手が良い制度と言えます。

 

<目 次>

1.東京都の「事業承継支援助成金」とは

この制度は、都内の中小企業が事業承継を進める際に必要となる

専門家への委託費用の一部を助成するものです。

 

助成限度額は200万円」、かつ助成割合は原則3分の2です。

 

さらに、小規模企業者が企業価値評価や自社株評価を行う場合は

一定の条件のもとで「全額助成」される仕組みも設けられています。

 

対象となるのは、

・自社株の評価
・企業価値の算定
・デュー・デリジェンス
・事業承継計画の策定
・後継者の人材育成
・M&Aの際の仲介業務
・M&A後のPMI(統合作業)支援

などに関する「専門家を活用する費用」です。

 

また、募集は年3回の頻度で行われるため、

自社の状況に合わせて比較的柔軟に活用することができます。

2.「国の補助金」との相違点

前回ご紹介した国の「事業承継・M&A補助金」と比較すると

以下の通りその趣旨が大きく異なります。

 

項目

都の事業承継支援助成金

国の事業承継・M&A補助金

◾️ 主な目的

承継準備

承継実行

◾️ 補助上限

200万円

2,000万円

◾️ 株価算定

◾️ デューデリジェンス

◾️ M&A仲介手数料

◾️ PMI支援

◾️ 設備投資

×

◾️ 対象地域

東京都

全国

 

事業承継を進める過程では、承継の方法を決める前に、

会社の現状を把握したうえでリスクや課題を抽出する」ことが

まず不可欠です。

 

都の制度は、そのための費用を支援する制度と言えます。

3.本制度で評価できる特徴

(1)「まず自社の株価を知る」からスタートできる

「会社の株価を改めて計算したことがない」

という経営者は決して少なくありません。

 

しかし、事業承継の選択肢である

・親族間承継
・従業員承継
・M&A

のいずれを選択する場合でも、

自社株の価値を把握することは重要な出発点になります。

 

特に長年事業を継続している企業では、

思いのほか株価が高くなっているケースもあります。

 

後継者への譲渡方法や納税対策を検討するうえでも、

まずは現状把握が不可欠です。

 

本制度を活用することで、

初期段階で必要となる費用面のサポートが受けられれば

心理的なハードルが下がるというメリットが大きいと思います。

(2) M&Aを決意する前段階で活用できる

「会社を売る」と決断する前には

 ・譲渡することが可能な会社なのか

 ・自社の企業価値はどの程度なのか

 ・買い手が見つかる可能性はあるのか

 ・譲渡に際してどのような課題があるか

を知りたいのが経営者の率直な想いでしょう。

 

しかしながら、

この初期段階における調査等に要する費用が

心理的なハードルになることがあります。

 

都の助成金は、その準備段階として

「M&Aを検討するための費用」に活用できる

というメリットがあります。

(3)後継者の育成にも活用できる

親族間承継や従業員承継では、承継後も会社を成長発展させるために

「どう後継者を育成するか」も大きな課題になります。

 

中小企業では社長個人にノウハウや人脈が集中していることが少なくないため、

後継者が決まったとしても、すぐに経営を引き継げるわけではないのです。

 

本制度では、

中核人材の確保や育成に関する外部専門家の活用も対象となっているため、

特に子どもへの承継を検討している企業にとって有難いサポートと言えます。

(4)自社の状況に応じてメニューを選択できる

事業承継の状況に応じて4つのタイプが用意されています。

◾️ Aタイプ:第三者承継(M&A)を検討している企業向け

◾️ Bタイプ:後継者候補が決まっており、計画的に引き継ぎを進めたい企業向け

◾️ Cタイプ:承継に備えて企業価値を高めたい企業向け

◾️ Dタイプ:事業や会社を譲り受ける側の企業向け

 

60代以降の経営者の場合、

「まだ後継者は決めていないが、そろそろ準備を始めたい」

というケースが多く見られます。

 

第三者承継(M&A)も選択肢としてありうると考えるなら、

まずAタイプを活用して現状分析から始めるとよいでしょう

4.注意すべきポイント

この制度で注意してほしいのが、

事前に指定支援機関による支援を受けることが要件になっている点です。

 

具体的には、

・東京都中小企業振興公社
・東京商工会議所
・東京信用保証協会
・東京都中小企業団体中央会

などが対象となります。

 

つまり、

「補助金が出るから申請する」のではなく、

「まず公的な支援機関に相談する」ことが前提となっている制度なのです。

 

また、補助金の交付が決定する前に

契約・発注した経費は対象外になる点にもご注意ください。

 

〜まとめ〜 

後継者へのバトンタッチが進みにくい原因として、

経営者の多くが、「まだ早い」と考えがちなことがあります。

 

ただ、「事業承継の検討が早すぎて困った」

というケースにはほとんどお目にかかりません。

 

逆に、

・後継者育成が間に合わない
・株価対策を検討する時間がない

・納税資金の準備が間に合わない
・経営者の健康面に不安が生じた
・取引先への説明ができない

など、事前の準備不足で選択肢が狭まるケースは枚挙にいとまがありません。

 

事業承継の成否は

準備期間をいかに余裕を持って確保できるか」で決まる

と言っても過言ではありません。

 

もう一つ、事業承継が進みにくい理由として、

経営者が

何から始めればよいかわからない

外部専門家に相談するとすぐに費用がかかる

という想いが消極的な姿勢につながっているように思います。

 

その意味では、都の事業承継支援助成金は、

『最初に踏み出す一歩』を後押しする制度と言えるでしょう。

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